ユーザー受容性の向上

人間工学設計によりシステムの受容性を高めます

人間工学設計

 人間工学(Ergonomics)は,人間を含めたシステムにおいて,人間と他の要素との相互作用を理解し,システムの総合性能の最適化を図るための専門領域です.
 下図に示したように,人間工学を適用した設計(Ergonomic Design)を実現するためには,まず,対象とする製品やシステムの利用の文脈,すなわち,どのような環境で,どのようなユーザーが,どのようなタスクを遂行するのかを把握する必要があります.次に,人間側とテクノロジー側のパースペクティブの違いを理解する必要があります.その上で,人間側からの要求をテクノロジー側で利用できる形に表現することが求められます.

 一方,人間中心設計(Human Centerd Design)は,使う人の要求に応えるための設計と評価の繰り返しプロセス自体のことを意味します.すなわち,図に示したように利用実態の調査(利用者,利用環境,タスクを知る) から再度利用実態の調査へ戻るの反復プロセスです.ユーザー中心設計(UCD)やユーザーエクスペリエンス設計(UXD)と同義です.

 ユーザーを中心にして他の要素との相互作用を理解するという点では,人間工学設計と人間中心設計とで基本的なスタンスに違いはないと考えています.

人間工学設計16箇条

 人間工学設計16箇条はこれまでの経験に基づき人間工学設計に関わる仕事をする場合の基本的な心構えを表現したもので,エルゴデザイン研究所の基本的なスタンスを表しています.

(1) 過去の文献や事例を探す前に利用現場を見る
(2) 専門家の意見よりユーザーの行動観察結果を重視する
(3) 開発者が誇る単一のスペックの最高は利用者にとっての快適の敵と考える
(4) コストを下げる前にユーザー受容性を上げる
(5) コストパフォーマンスにおけるコストは時間軸上での製造コスト超克の問題としてとらえる
(6) 販売店も開発担当部長もユーザーの代表ではないことに注意する
(7) 潜在的な要求はユーザー自身も分かっていないと考える
(8) 製品のライフサイクル全体を視野に入れる
(9) 人間工学設計に関する研究開発がユーザーから見えるようにする
(10)短期的な成果より継続の重要性を認識する
(11)企業間,技術間,部署間の壁を破壊する
(12)表層的な技術間競争やカタログスペック競争には関わらない
(13)いたずらにUDを唱えることは百害あって一利なし.ユニバーサルデザイン実現の鍵は多様性に対する理解とそれに対する適応性/柔軟性である
(14)デザイン部門とマーケティング部門が知りたい情報は異なる.どのように使われるかと,だれが買うかは別問題,ただし,これらは相補的にユーザー受容性と係わっていることを意識する
(15)対症療法に走らずに問題の発見と解決を目指す
(16)エスノグラフィックな質的研究を重視する